第2章 2
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もしや…とは思っとったけど、まさか本当に……
「…ポ、ポチ…っっ」
「もう!!笑わないって言ったじゃないですか!!」
二人とも顔が真っ赤や。
俺は笑いが止まらず息が出来なくて、彩夏は恥ずかしさと怒りで。
「言うんじゃなかった」
「悪い!!俺が悪かった!!」
機嫌を損ねて、ふいとそっぽを向いた彩夏に、俺はまだ少しだけ笑いながら手を合わせて頭を下げた。
───こんな、くだらない話がずっとしたかった。
◇
父が『覚えやすいから』とつけた名前。
別に、雑種とか日本犬だったらまだ良い。
でも愛犬は………ゴールデンレトリバー……もっとカッコいい名前をつけてあげたかった……。
「そういえば、yasuさんもイヌを飼ってますよね」
「ん?あぁ、飼っとるで」
「名前は…」
「『親方』。」
紅茶を飲みながら、当たり前の様にyasuさんが言う。
「……ウチの『ポチ』よりも可哀想じゃないですか?」
「良いんや。本人が一番喜んどる」
それから『親方』がどれだけ可愛いか、つらつらと語られた。
……愛されてる…といえば良いのかもしれないけど、愛され過ぎててちょっと『親方』が可哀想になったのは、私だけの秘密。