• テキストサイズ

【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第9章 たべられたひ


息ができなかった。



狭くて、ぬるぬるしていて、身体の輪郭がどこまで自分のものかも曖昧になる。



柔らかく蠢く内壁に、包まれている。
ぴったりと貼りつくような感触と、しっとりした熱。
息を吸えば吸うほど、ぬめった空気が肺の奥へ沈んでいくようだった。



胸が、きゅうっと痛くなった。



助けを求める声は、口から漏れる前に、溶けて消えた。



音が、ほとんど聞こえなかった。
聞こえるのは、自分の心臓の音だけ。
どくん、どくんと、はっきりとした鼓動が、身体の内側から響いていた。



もう、ダメかもしれない――
そんな言葉が、ふわふわと頭の奥に浮かんだとき。



突如として、世界が裂けた。



強い衝撃とともに、体が外へ引きずり出される。
ひんやりとした空気が、皮膚に触れた。



目の前に広がったのは、明るい天井。
その下に、黒く長い影が揺れていた。



ルーサーだった。



彼の手が、私の身体をそっと支えていた。



刃物のような匂い。
そして、何かを裂いた直後の、鉄と血のにおい。



私は何も言えなかった。
口を開く前に、足元が崩れるようにふらついた。



そのまま、誰かの腕の中へと倒れ込む。



温かくて、硬くて、力強い腕だった。
/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp