第14章 ■短編 アイボリー家、雪上大作戦
庭は一面の銀世界だった。
「ルール無用!全員敵だ!」
ランダルが勝手に宣言した。
ばしゅっ!
いきなりニェンの渾身の雪玉がランダルの顔面を襲い、
ランダルは派手に雪に突っ込んだ。
その様子に、
セバスチャンはくくっと口元を押さえ、
ほんの少しだけ、肩を震わせた。
(いい気味だ──)
そんなふうに、
日頃の小さなうっぷんを滲ませながら。
ニョンは小さな雪玉を、そっと投げる。
ランダルはぐしゃぐしゃになりながら、
なおも雪の中で笑い、転げ回る。
ニェンは雪玉を投げるたびに、
フンッと鼻を鳴らしていた。
──私は窓辺に座り直して、
外をぼんやりと眺めた。
みんな、寒そうなのに、
すごく楽しそうだった。
(……いいなぁ。)
そう思ってから、
胸の奥がちくりとした。
隣では、
ルーサーが静かに私にブランケットをかけ直してくれる。
「風邪が長引くぞ。」
その言葉に、私は小さく頷き、
湯気の立つカップを抱えた。
カップの中、温かいハーブの香り。
外では、
誰かの笑い声と、雪の飛び散る音。
冬のアイボリー家は、
今日も、実に、実に賑やかである。
(たぶん、私ももうすぐ一緒に笑える。)
──そんな気が、少しだけした。
おわり