• テキストサイズ

【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第8章 いないひと


【ニョンの場合】

屋敷の一角。
光の差し込まない広間の真ん中で、ニョンは静かに座り込んでいた。



足元には、引き出されたティッシュの箱。
ふわふわとした白い紙が、周囲にいくつも舞っていた。



引き出しては放り、引き出しては落とす。
爪を使うでもなく、強く引くでもなく。
ただ、やさしく摘まんで、ふっと放つだけ。



ティッシュはふわりと宙を漂い、床へ落ちるまでのあいだ、
わずかな空気の流れに乗って、思い思いにくるくると舞った。



ニョンは、それを見ていた。



追いかけるでもなく、触れ直すでもなく、
ただ、舞っていく紙の行方を目で追っていた。



まるで、なにかを埋めるかのように。



昨日のことが、頭から離れなかった。



あの軽さ。
腕の中に飛び込んできたのぬくもり。



あたたかくて、ふわふわしていて、
今でも、抱いていた腕に感触が残っている気がした。



が自分のほうへ来たのは、きっと間違いだったのだろう。
でも、それでも――うれしかった。



足元の紙片が、ふわりとまた一枚、宙へ浮かぶ。



風は吹いていないのに。
けれど、舞うものを見ていると、なぜか落ち着いた。



ニョンはしゃがんだまま、じっとそれを見つめていた。
/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp