第7章 らっとまんはんと
暗くて、せまくて、あたたかい。
棺の中で、私はゆっくりと今日のことを思い返していた。
ニョンは、なんだか少しだけ、いつもより挙動がふしぎだった。
何かを言いかけて、何度もやめていたような――そんな気がした。
あのとき、すこし赤くなっていた耳のことも、今ぼんやりと思い出せた。
それから、ニェン。
血まみれで現れて、勝ち誇ったように通り過ぎていったけれど、
あのあとちゃんと、ルーサーに褒めてもらえたのだろうか。
私は声に出さず、ただ胸の中でそっと問いかけるように思っていた。
……そのときだった。
ランダルの体が、ゆっくりと寄ってきた。
音もなく、するりと毛布の中を滑るように。
私の胸元に、やわらかな額がそっと触れた。
鼻先が、服越しに微かに沈む。
それが意図的かどうかを、私は考えなかった。
私はただ、何も言わずに、その頭を撫でた。
しっとりとした髪の感触。
なでるたびに、ランダルの呼吸がふわりと肌をかすめる。
いつもより――すこしだけ、熱かった。
それでも私は、やっぱり何も言わず、
ゆっくりとその髪をなで続けていた。