第7章 らっとまんはんと
ランダルは私の手をとったまま、ゆっくりと歩きはじめた。
何も言わない。
でも、手のひらの熱が、言葉の代わりのように伝わってくる。
私も、何も言わずについていった。
歩幅のちがいも、速度のずれも、不思議と感じなかった。
気づけば、ランダルと同じテンポで、同じ道を歩いていた。
廊下の空気は落ち着いていて、どこか満ち足りていた。
戦いのあとに残るものはもうなく、ただ夜の静けさだけが残っていた。
ときどき、ランダルがふっと私の方を見た。
視線が合うと、小さく笑って、目を細める。
「こわくなかった?……うん、大丈夫そうだね」
言葉に安心の色をのせながらも、
ランダルはふと、前を向いたままぽつりとこぼした。
「……でもさ、ボク以外に……ああやって、抱かれてるの見るの、なんか……」
そこまで言って、言葉を切った。
口を閉じたまま、ほんの一瞬だけうつむく。
「……やっぱ、大きい方が……かっこよく見えるのかな、なんて……」
私は、ランダルの方を見た。
ほんの少しだけ首をかしげて、小さく問いかける。
「……ん?なあに」
その声に責める色はなかった。
ただ、聞こえなかったから――それだけの、静かな反応だった。
ランダルは目を瞬き、少しだけ困ったように笑った。
「ううん、なんでもないの。……ボクのひとりごと」
そう言って、私の手をぎゅっと握り直す。
そのあと、わたしたちは広間へ戻った。
いつものようにみんなで夕飯を囲み、ひとときのだんらんを過ごした。
温かい湯気と、食器の音。
少し笑って、少しだけ静かで、そんな時間が流れた。
そしてシャワーを済ませると、ランダルとセバスチャンと私の三人で、
静かにランダルの部屋へと戻っていった。
棺のある、あの部屋へ。