第6章 おしえて、るーさーさん
ランダルの部屋に戻ったのは、スープの香りがまだ喉の奥に残っているころだった。
扉を閉める音がして、足音が絨毯に吸い込まれていく。
部屋の隅に、棺が三つ。
セバスチャン用、ランダル用、そして夢主用にあつらえられたそれらは、どれもふかふかの寝具が中に仕込まれていて、意外なほど寝心地がよい。
それぞれ微妙に内装の色が違う。
セバスチャンの棺は深い緑の布地に、よく手入れされたブランケットがかかっていた。
彼は何も言わず、自分の棺へ向かっていくと、靴を脱ぎ、静かに横たわった。
まくらに頭を沈めた瞬間、もう眠ってしまいそうだった。
私は部屋の中央に立ったまま、ランダルの動きをぼんやりと見ていた。
「はいはい、はこっちー」
ランダルは自分の棺の蓋を押し広げ、中の毛布をふわっと整えながら呼ぶ。
私の背中を軽く押す手が、どこか嬉しそうだった。
「っていうかもう、ボクたちのいつもの場所だもんね」
私は黙って頷いて、棺の縁に手をかけた。
ランダルが中にすっと入って、空いた隙間に私を引き込むようにして座らせる。
「よいしょ、っと。……ふふ、、あったかい」
棺の中は狭くて、すぐに腕や足が触れ合う。
けれど、それを不思議には思わなかった。
これはもう、“いつもの”ことだった。