第6章 おしえて、るーさーさん
温かい食事があって、においがあって、音があって。
椅子の軋みと、カトラリーの音が、ときどき混ざった。
誰かが食べて、誰かが話して、誰かが黙っていた。
ときどき笑いがこぼれて、誰も怒っていなかった。
私はパンをちぎって、スープをすくって、静かに食べた。
その手の向こうには、ランダルがいて。
ニョンがいて、ニェンがいて、セバスチャンがいて、ルーサーがいた。
テーブルを囲んで、ただそれだけで、
きょうも“ふつう”の家族だった。
ルーサーに撫でられた場所は、まだほんのり温かかった。
あのとき、たしかに何かが触れて、何かがすうっと消えた気がする。
でもそれが、なんだったのかは思い出せなかった。
わからないまま、私はパンのかけらを口に運び、
スープの湯気を目で追いながら、何も考えないふりをした。