第2章 まどろみのなかで
蓋を開けた棺の中から、ランダルが先に身を起こす。
伸ばされた腕に導かれながら、私もそっと体を起こした。
「よく寝たねぇ、」
ニッコリとほほ笑んで、くしゃくしゃと私の頭を撫でる手は優しいけれど、どこか一方的だった。
手を握られたまま廊下へ出る。
まだ朝が浅いのか、屋敷の中は静かで、ほんの少し湿ったような空気が漂っていた。
ランダルは私の手をぎゅっと引いた。
そのまま何の前触れもなく、隣の部屋へと連れ込まれる。
「きみ、きょうは……ぼくとだけ遊んで。ぜったい。いいでしょ?」
頷く暇もないまま、ランダルは言葉を重ねる。
「だって、きみ……最近ちょっと、ニョンばっかり見てる気がするし」
視線が合うと、にこっと笑ってはいるけれど、そこに冗談の色はなかった。
私は静かに瞬きを一つ返す。
それだけで、ランダルは満足そうに口を綻ばせた。
「ね?やっぱり、は、ぼくのこといちばんだもんねぇ」
その言い方は、まるで私が答えたかのようだった。
手を引いたまま、ランダルはふわふわと歩き回る。
私が止まれば、くるりと振り返り、髪に触れ、袖を引き、抱きついてきたかと思えば、次の瞬間にはふらりと離れてまた笑う。
まるで気まぐれな猫のように。
いや、それよりもずっと——支配的で、甘ったるくて、振り回される。
「きょうはね、だーれにも会わなくていいから。ぼくらだけで、いろいろしよ」
私の答えなど、最初から求めていないのだろう。
でも、拒む理由もない。
この屋敷に来てから、私はずっと——こうして彼の流れに、身を任せていた。