第6章 おしえて、るーさーさん
私は、ぽつりと呟いた。
「……ニェンって、すごいんだね」
ニェンの動きが止まった。
目を細めたまま、私の顔をじっと見つめてくる。
その視線には、まだ警戒と苛立ちの余熱が残っていたけれど――ほんのわずかに、まばたきが遅れた。
「えらいんだ……この家、まもってるんだ」
私の声は淡々としていた。
けれど、それはうそでも、ごまかしでもなく、本心だった。
「ネズミ、にがさないんだ……すごいなあ」
それはたぶん、ニェンが望んでいた種類の称賛ではなかったかもしれない。
けれど、それでも確かに“褒め言葉”だった。
ニェンは目をそらし、鼻をひくつかせる。
「……べつに、すごくはねぇよ」
言葉に力が入っていなかった。
吐き捨てるようでいて、少しだけ音が丸い。
口元が、怒っているときの形からほんのわずかだけ緩んでいた。
ニョンが、ようやく息をついたように小さく体を揺らした。
ぴくりと耳が動き、まるで「大丈夫……かな?」と問いかけるような目でニェンを見上げている。
私は、それらを特に読み取ることもなく、ただ静かにソファに座っていた。