第6章 おしえて、るーさーさん
まぶたが重たくなってきた。
ルーサーの指が、一定のリズムで髪を撫でている。
そのぬくもりが、頭の奥をぼんやりと溶かしていくようだった。
私の頬は、ルーサーの胸元に触れていた。
聞こえるのは、テレビの音と、キャットマンたちの気配、そして、ルーサーのゆっくりとした呼吸。
瞬きの合間に、世界がすこしずつ滲んでいく。
そのとき、ギリッ、と音がした。
視線を向けなくても、それが誰のものかはわかった。
ニェンだった。
ソファの端で、片脚を揺らしながら、こちらを睨みつけていた。
爪が肘掛けに深く食い込んでいる。ぐっと力が入るたびに、布地がかすかに裂けていく。
その顔は、もう無表情を保てていなかった。
牙を噛みしめ、鼻の奥でくぐもった息が漏れている。
ニョンが、その横でそわそわと耳を動かした。
ちらちらとニェンを見ては、目を泳がせている。
しっぽの先が早く揺れて、足元が少しずつソファの端に寄っている。
「……にゃ……」
ようやく漏れた小さな声も、空気を変えるには至らなかった。
私は、何も言わなかった。言う理由がわからなかった。
まぶたの縁がぬるく湿って、目を閉じるまで、もうそう時間はかからなかった。