第6章 おしえて、るーさーさん
キャットマンたちは、まだテレビのほうを見ていた。
ニョンは音に反応して耳を動かしながら、画面をじっと見つめている。
ニェンもそれを真似るように視線を向けてはいたが、ちらりちらりとこちらを盗み見るその目は、どうにも落ち着きがなかった。
ルーサーの指は、私の髪からそっと離れて、また膝の上に戻った。
それでも私の視線は、彼から逸れなかった。
そのまま、小さく口を開いた。
「……ときどき、もやもや、する」
それは、自分でもどこから出てきた言葉なのかよくわからなかった。
胸の奥に残る、うまく掴めない煙のような感覚。
ルーサーの指が、ふたたび私に触れた。
「――そう」
そのまま、頬へ。指の腹が、やわらかく肌をなぞる。
「では、すこしいじってあげよう」
やさしく微笑むことも、冷たく脅すこともないその声音は、どこか異質で、ただ事実を述べているようだった。
指先が、私の頬に沈んでいく。
押し込むでも、切り裂くでもない。まるで、柔らかい膜をゆっくりとくぐっていくような動き。
肉も骨も、そこにあるはずなのに、何も抵抗がなかった。
ぬるり、とした何かが触れた気がして、私は息を止めた。
けれど、逃げることはなかった。
それが恐ろしいことなのかどうかも、まだよくわからなかったから。