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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第5章 おいしゃさんごっこ


そのときだった。



がちゃん、と重たい扉の開く音がした。
金属がこすれるような鈍い音が、空間を断ち切るように響いた。



「……もういいだろう」



その声を聞いた瞬間、私の動きが止まる。
ルーサーだった。



黒い衣服をまとい、無駄のない足取りでこちらへ歩いてくる。
その背後には、セバスチャンの姿があった。
私と目が合いそうになったが、彼はすぐに視線を逸らした。



ルーサーの視線が、に向けられる。
その目には何も宿っていなかった。
ただ、静かに“見ている”だけだった。



「……冷えているな」



そう呟いたルーサーは、そっとの頬に触れる。
肌はひんやりとしていた。
濡れたせいだけでなく、血の気が引いていた。
恐怖と疲労に、身体の奥から熱が抜け落ちていた。



「ニェン」



廊下の奥から現れた男は、黒いトップスの胸に「NEVADA」と白く描かれていた。
目の下と頬に二本の線。煙草の匂いをまとい、鋭い目つきでゆっくり歩いてくる。



「……ニャア」



低く、くぐもったような声。
そのままの傍に近づき、ためらいなく抱き上げる。
腕の下から、密度のある体つきが伝わってきて、私は少しだけ肩を揺らした。



「風呂へ。あたためてやれ」



ルーサーがそう言うと、ニェンは「ニャア」ともう一度だけ鳴き、静かに部屋を出た。
そのあとを、セバスチャンも無言でついていく。



部屋には、ルーサーとランダルだけが残された。



「準備したのはお前だろう。なら、片づけも最後までやれ」



落ち着いた声が空気を断ち切る。
ランダルは肩をすくめて、口を尖らせた。



「えぇ~、でも動かないやつもあるんだよ~。ひとりじゃ大変~」



文句を言いつつも、ランダルはしぶしぶ動き始めた。
部屋の空気は、熱と狂気から“後始末”の静けさへと切り替わっていた。
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