第5章 おいしゃさんごっこ
「そうそう、そこそこ、そこ……」
ぬるりと何かに触れた感触。
他のものより硬く、形がある。
引き上げられた指先にぶら下がっていたのは、乾いた羽のようなものがついた、
――どこかの誰かの小さな死体のようなものだった。
すぐ隣には、プラスチック製の人形の脚だけがぽろりと転がっていた。
体液もなければ腐臭もない。ただ、そこに「入っていた」だけの異物たち。
「えへへ、やっぱあった~!」
ランダルの声がはずむ。
音にも感触にも何の違和感も示さず、ただ遊んでいる時のような笑顔のまま。
「もっと見つけて、。まだあるよ、奥のほう……」
その間にも、わずかににじみ出た鮮血が、夢主の手首を伝い、
袖口の白い布にしみ込んでいく。
血の量は少ない。けれど、確かにそこに“人体”の反応が存在していた。
染みは広がり、夢主の前掛けの裾にもぽたりと滴った。
けれど、夢主もまた気づいていないように――あるいは、気づいていても動けないように、ただ作業を続けていた。
ランダルの息は熱を帯び、目の奥がぎらぎらと光っている。
彼の指先は、まだ夢主の手元から離れず、まるで内側を“掘り進める”ようにわずかに力を込めていた。
そのときだった。
後ろから、かすかな吐息と震える足音。
私は振り返れなかった。けれど、その気配の主が誰なのか、すぐにわかった。
セバスチャンだった。
立ったまま、歯を食いしばる音が聞こえた気がした。
喉の奥からえずくような音が漏れて、吐き気を必死にこらえているのが伝わってきた。
それでも何も言わず、彼はただ、静かにその場を後にした。
扉が開く音も、閉じる音もなかった。
まるで、自分の存在を最初から消してしまうように、影だけが抜け落ちていった。
後ろの気配がふっと消えたことに、私は気づいた。
でも、ランダルは何も言わなかった。
彼はただ――私と、自分の中にだけ集中していた。
視線も手も、完全に“この遊び”にのめり込んでいる。
セバスチャンがいついなくなったのか、
ランダルはおそらく、一度も見ていなかった。