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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第5章 おいしゃさんごっこ


私は、何をするつもりだったのだろう。
刃を引いた手が、次に向かったのは――その暗闇の奥だった。



指先が、迷いながら沈んでいく。



何もないはずの空洞なのに、
中には「何か」があった。



ずぶ、と粘つく音。
ぬめり、熱、ひきつれるような柔らかさ。
まるで内臓を触っているかのような感触――いや、「内臓っぽい」だけの、なにか。



指を動かすたびに、どこかでぺちゃりと音がした。
弾力も、形も、あまりにもリアルなのに、
なぜかぜんぶ「つくりもの」にしか感じられなかった。



違う。
これは、知っている“体の中”じゃない。
触れてはいけない“なにか”だと、皮膚の感覚だけが警告している。



「……っ……!」



思わず引きかけたその手を、別の手が包み込む。
ランダルだった。



彼は笑っていた。
口角をゆるく吊り上げ、目の奥を細め、頬をかすかに紅潮させていた。



「すごい……、すごいね……!ちゃんと入ってる、ちゃんと触れてる……!」



その声は、明らかに興奮していた。
笑っているのに、息が上ずっている。
見たことのない表情だった。



「ねぇ、ねぇ、もっと奥までいってみて?なにがあると思う?なにが“いる”と思う?」



手袋ごしの手が、私の手を押すように、奥へ奥へと導いていく。



闇の中の臓器らしきものが、呼吸をしているように脈打っていた。
触れた指先に、柔らかな脈動と、得体の知れない熱が伝わる。



吐き気がした。
けれど、体は止まらなかった。



ランダルの視線は、私の顔をじっと見つめていた。
お腹の中ではなく――この状況にどう反応するのか、どんな顔を見せるのか。
そのすべてを逃さず味わうように、ゆっくりと、狂気すらにじんだ瞳で追ってくる。
切られた腹からは熱が立ちのぼっていたが、ランダルが痛みを感じているのかはわからなかった。
ただ確かなのは、彼がその状況そのものに、ぞくぞくと身を震わせるほど興奮していたことだった。
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