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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第5章 おいしゃさんごっこ


ランダルが指差した銀色のメスに、私はそっと手を伸ばす。
何も考えないように、頭の中を空っぽにして。
けれど、指先が金属に触れた瞬間、ひやりとした重みが背中まで走った。



「それそれ~!そうそう、それ持って~……」



手術台の上から響くランダルの声は、あまりにも無邪気で楽しそうだった。
私がメスを持ったことが、まるで嬉しくてたまらないというように。



「オペしやすいように……よいしょっと」



そう言って、ランダルは自分の着ていた白衣の前をはだけ、
その下に着ていた学ラン風の制服のボタンをひとつずつ外していった。
少し照れくさそうな顔で笑いながら、ゆっくりと腹部を露出する。



シャツのすそを指先でたくし上げ、お腹をまるごとさらけ出すようにして見せてくる。
細くて白い肌が露わになると、その上にほんのりと冷たい空気が流れた。



「ね?これなら切りやすいでしょ~?ボク、ちゃんと準備するから安心してね」



笑顔のまま、両手を脇に揃え、まるでプレートに乗せられた実験体のように自分を整えるランダル。
それはどこか献身的ですらあったけれど、だからこそ、狂気が際立っていた。



私の手は、震えていた。
それでも、ランダルが“していい”と言った。
それが許可になってしまった気がして、私は動きを止められなかった。



「……ほんとにやる気かよ、あいつ……」



セバスチャンの呟きは、あきれと嫌悪がにじんでいた。
けれど、それでも止める様子はなかった。
ただ、壁からゆっくりと背を離し、視線だけをこちらに向ける。



私は無言のまま、銀色のメスを握り直した。
道具の反射光が揺れて、ランダルの身体に落ちる。



「そのまま、ね~……ていねいに、やさしく切ってね?せんせい~」



その声はあくまで明るく、楽しげで、
けれどその下に、言葉にならない“なにか”がじっと潜んでいた。
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