• テキストサイズ

【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第4章 ぬいあわせのひ


指先が、そっと頬に触れる。



爪を立てないように、なぞるような軽さで。



「ねぇ、……いま、ぜんぶ見て。こっち、見てて」



ランダルは私の膝に手を置いたまま、
しゃがんだ姿勢のままじっと顔を見上げてくる。



その目は、笑っていた。
けれど、それ以上に――飢えているようだった。



「ふふ……ほんとに、かわいいね。かわいすぎて、もう、どうしよう……」



私の手の甲に自分の頬を押しつけて、
そのまま喉の奥で小さくゴロゴロと音を鳴らした。



「ボクだけのかわいいお人形。ずっと、そうしてて。
いや、やっぱだめ。ちょっと動いて。いやでも、やっぱりそのままでいて……あ〜もう!」



片手を伸ばして、頭をくしゃっと撫でる。

くしゃくしゃと形が崩れていくリボンを見て、
「あ……かわいく結んだのに」などと自分で笑って、
もう一度、きゅっと結び直した。



「ねぇ、は、いまのじぶん、どう思う?かわいいって思う?」



私は何も言わずに、ただランダルの顔を見返す。



それだけで、彼は満足げに目を細めた。



「うん、そう。かわいいね。
わかってる。ボクが見てるから、かわいくなるんだよ」



片手で顎を支えるようにして、顔をぐっと近づける。

額が触れるか触れないかの距離で、熱を伝えてくる。



「……ふふ、もっと触りたい。いや、見るだけでもいい。
でも触ってるほうが、安心する。ううん、どっちも……どっちも、ほしい」



喋りながら、自分でもどうしたいのかわからなくなっているようだった。



「って、不思議だね……こんなに、完璧なのに。ボクが作ったわけじゃないのに」



そんなことを呟いて、ランダルは私の手を取った。

そのまま、ゆっくりと立ち上がる。



「……ね、そろそろ行こっか」



柔らかく笑いながら、でもどこか熱を孕んだ手つきで、
私を棺のあるほうへと導いていく。



歩幅を合わせるように、指をしっかり絡めたまま。



廊下の灯りはもう、ひとつずつ落とされていて、
静かな暗がりの中、ランダルの足音だけが軽く響いていた。

/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp