第4章 ぬいあわせのひ
何度かの着替えを重ねるうちに、
ランダルの手の動きから、はじめの戸惑いが少しずつ抜け落ちていった。
「この襟、かわいいけどちょっと地味だな……うーん、袖だけこれ使ってみる?ね、こっちのほうがボク好み……」
試着のたびに私をくるくると回し、
別の服のパーツと取り替えては、首を傾げたり、うなずいたり。
そうして組み合わされたのは、
光沢のあるサテン地に水玉とストライプがミックスされたスカート。
ふわふわしたレースのパニエが幾重にも重なり、まるでお菓子のように甘く広がっていた。
上半身には、左右で色違いのハート型ボタンが並ぶ白いブラウス。
パフスリーブに揺れるリボンが付け足され、
仕上げに、鈴のついたチョーカーが首元でちりちりと鳴っている。
「……できた。これがいちばん、いい」
ランダルは満足そうに小さくうなずくと、
そっと私の肩を押して、椅子に座らせた。
「もうちょっとだけね。仕上げ、大事だから」
テーブルの引き出しから、くしとブラシ、
小さなパレットとリップグロス、そして——長いリボンを一枚。
「動かないでね、。今、リボン、つけてあげるから」
くしが髪に触れる。
根元から丁寧に、とかして、ほぐして、整えていく。
ランダルは椅子の背後にまわり、
指先で髪をまとめながら、リボンをそっと首の後ろへ回す。
「……こういうの、うまく結べるようになったの、最近なんだよ」
ぎこちない手つきで、左右の輪をそろえるようにゆっくりと結んでいく。
そして、前に回り込んだランダルは、しばらく黙って私の顔を見つめていた。
「……うん、うん。やっぱりかわいい……」
ランダルの目が、じっと私の顔を見つめていた。
「って……人形みたい。……ボクの、いちばんかわいい人形」
その言葉には笑みの気配もあったけれど、
どこか、胸の奥でからからと鳴るような、乾いた響きが混ざっていた。