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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第4章 ぬいあわせのひ


少しの沈黙が落ちたあと、
ランダルは自分の頬を軽く叩くようにして、ひとつ深呼吸をした。



「……うん、じゃあ、き、気を取り直して……最初はこれ!これからいこっか」



差し出されたのは、
くるくるとした幾何学模様が目にうるさいワンピース。
左右の袖の長さが違い、裾はピエロの襞のように波打っていた。



私は黙ってそれを受け取り、後ろを向いて着替え始める。



シャツが床に落ちたままなのを、
ランダルはなぜか足でそっと端に寄せて、踏まないように気を配っていた。



「チャック、後ろだから……ちょっとだけ、いい?」



ランダルの手が、私の背中に触れた。



ぴたりと指先を当て、するするとチャックを上げていく。



その間、なぜか呼吸の音だけがやけに耳に残った。



「……うん……に、似合ってる……似合ってると思う、ボクは」



小さく震えたような声。



前に回ってくると、ランダルは手を組み、視線をそらしながらちらちらと見てきた。



「うわ、あ……やっぱりいい……すごく……」



耳の先がほんのり赤い。
けれどそれを隠すように、勢いよく次の服を取り出した。



「じゃ、じゃあ次!これはね、ちょっと特別!」



彼の手にあるのは、リボンの大きなドレス。
時代も目的もよくわからない、装飾だけがやけに豪華な服だった。



「タイツもいるし、靴もそれっぽいのあるから……ちょっと待ってね」



慌てたように靴箱を開けながら、ランダルはぶつぶつ何かを呟いていた。
「変じゃないよね……かわいい、うん、ちゃんとかわいい……」



私は受け取った服を手に、また後ろを向く。



その動きを盗み見るように、ランダルの目がちらりとこちらをかすめた。



「……って、さ……」



ぽつりとこぼした声は、少しだけ息を呑むように詰まり、続いた。



「そういうの、なんていうか……全然平気なんだね……」



恥ずかしがる様子も、戸惑いも見せない私に、
ランダルはどこか不思議そうに首を傾げた。



「……いや、うん、いいんだけど……いいんだけどさ……」



気まずげに笑いながら、手にしていた服の裾を、なぜかきゅっと握りしめていた。
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