第3章 ひとつぶのよる
「……そうか」
ルーサーはとランダルの反応を見届けると、
一歩だけ足を引いて、扉のほうへ目を向けた。
「キャットマンたちを探してくる。
お前たちは先に寝てなさい」
そう言い残すと、ルーサーは静かに部屋を出て行った。
足音はほとんどしなかった。
けれど、扉が閉まる音だけが、やけに静かに響いた。
ぽつん、と残された空間に、再び沈黙が落ちる。
その中で、ランダルがふわりと息をついた。
目線をへ向ける。
「……じゃあ、行こっか」
そう言った次の瞬間、身体がふわっと浮かぶ。
驚く暇もないまま、はランダルの腕の中にいた。
小さな体を、ひょいと軽々と持ち上げるその動作は、
その華奢な見た目からは想像もつかない力強さだった。
けれど、ぎゅうっと握りしめるような力ではなかった。
丁寧に、大事なものを運ぶように、ランダルはを抱えて立ち上がる。
「ふふ、軽いなぁ。ほんとに、ちっちゃい」
頬を寄せ、笑う。
それは嘘やただのからかいではなく、
「手元にある」という実感として確かめているような口ぶりだった。
足音ひとつ立てず、ランダルはリビングを出る。
の視界はランダルの肩越しに揺れながら、
静かな廊下を進んでいく。
どこも薄暗く、足元に影が長く伸びる。
けれど、ランダルの体温があるぶんだけ、
その暗さが、どこか安心できるようにも思えた。
「きょうは……ちゃんと、ボクが寝かしつけてあげるからね」
子守唄のように、それとも命令のように。
静かに、それでもどこか抗えない響きで、
ランダルはそう呟いた。