第3章 ひとつぶのよる
部屋の扉が、静かに閉まる。
薄暗い寝室。
棺のそばまで来ると、ランダルはを抱えたまま、その中を覗き込んだ。
狭い。けれど、そこはふたりの決まった場所だった。
ランダルはそっと、を下ろす。
優しく毛布をめくり、棺の中へやわらかく寝かせた。
「……うん。いいこ」
肩まで布を整える手つきは、ぬいぐるみに服を着せるようだった。
そのまま隣にランダルも潜り込む。
中で体がぶつかる音がして、ぴたりとくっついた。
「かわいいなぁ……こうしてると、安心するんだよね……」
髪に顔を埋め、額をくっつけ、耳元で囁く。
頬を撫で、鼻先をすり合わせてくる。
「って、あったかくて……
ちゃんと“ここにいる”って感じられるのが、うれしくてさ……」
その触れ方は、執拗でさえあった。
けれどはそれを嫌がらなかった。
いつものこと。いつもの夜。
目を閉じながらも、はランダルの動きを観察していた。
そしてふいに——そっと顔を寄せた。
胸元に額を押しつけるように、静かに甘える。
ランダルの動きが止まり、しばらく固まる。
やがて、口元がゆっくりつり上がった。
「……今の、なに?今の……かわいすぎない……?」
恍惚としたような声でそう呟くと、ぎゅっと抱きしめてくる。
「いいこ……いいこ、……
もっと甘えてよ……ね……?」
頬をすり寄せながら、何度も撫で、名前を呼ぶ。
そうしてようやく、棺の蓋がゆっくり閉じられる。
ぎぃ……ぴたり、と音がして、闇がふたりを包んだ。
真っ暗な中、ランダルの腕がしっかりとを抱きしめている。
ふたりはそのまま、ぴたりとくっついて——
眠りについた。