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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第3章 ひとつぶのよる


ぽつ……ぽつ……と、声が落ちてくる。

 

 それはランダルの声だった。
 けれど、なにを言っているのか、にはわからなかった。

 

 呟くような、ささやくような……でも、
 どこかしら狂気じみた熱を孕んだ声。

 

 「……しらない、ところで……」

 

 「……最後まで、みたかったのに……」

 

 「……ぼくの、だった……のに……」

 

 断片だけが、耳に届く。
 言葉の意味よりも先に、背筋がじわりと冷えていく。

 

 なにか、ひどく怒っている。

 でも、それが誰に向けられたものなのか、にはわからなかった。
 ただ、その怒りがとても静かで、だからこそ、底知れず怖かった。

 

 ランダルは、血の滲む指先を口にくわえたまま、
 ぐちゃり、と噛みしめていた。

 ぽた、ぽた、と床に落ちる赤い雫。
 彼はその音にも気づいていないようだった。

 

 「……なんで、ぼくが……」

 「……ぜんぶ、だったはずなのに……」

 

 は、息を潜めるようにして座っていた。

 膝をぎゅっと抱え、身を小さく丸めながら、
 じっと、ランダルの様子を見つめている。

 

 怖い、というよりも……わからない。

 ランダルがなにを思い、なにに怒っているのか、
 どこまでが現実で、どこからが彼の中の世界なのか——

 それが、わからなかった。

 

 「……みせてくれなかった……」

 「……壊れるなら、せめて……」

 

 聞き取れた断片が、ずしりと胸に残る。
 それだけで、じゅうぶんだった。

 

 ランダルは、ふとこちらを見た。

 

 目が合った。

 

 その瞳は、まっすぐにを見ていた。
 けれど、その奥にあるものは、何か別のものだった。

 

 まるで——

 壊れていない、まだ残っている“何か”を探すような、そんな目だった。

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