第2章 まどろみのなかで
「でも、やりすぎって……どこが?」
ランダルはゆっくりと振り返り、セバスチャンを見た。
声の調子は穏やかで、笑みも崩れていない。
けれど、瞳の奥にある光は、少しだけ鋭くなっていた。
「ちゃんと影を踏んでからにしてるし、強く触ってるわけでもない。ぜんぶ、やさしく、してるだけだよ?」
ランダルの声は、言い訳にもならないほど軽かった。
ただ、自分のルールの中に矛盾はないと信じている声音。
セバスチャンは返事をしない。
表情も変わらず、視線だけがこちらを向いていた。
「セバスチャンってさ、のこと守りたがるよね。ふしぎ」
ランダルはくすりと笑う。
私のすぐ近くにいるのに、もう私を見てはいなかった。
まるで、ふたりの間にある何かをいじって遊んでいるような雰囲気。
「でも、がなにも言わないってことは、だいじょうぶってことだよねぇ」
そう言いながら、ランダルはまた私の肩に手を置いた。
体重は乗っていない。手のひらのぬくもりだけが、そっとそこに乗っている。
「ちゃんとやさしくしてるよ。ね?」
静かな声だった。
けれど、それが“答えを求めている”ものではないことは、誰の目にも明らかだった。