第12章 ■短編『よるのまんなか』
テレビの画面は、また別の映像に切り替わっていた。
誰かの手が、延々と白い布をたたんでいる。
意味もなく、音もなく、ただ機械的に繰り返される光景。
それでも、誰も席を立たなかった。
は、ランダルにもたれたまま、静かに目を細めていた。
膝の上に乗ったジュースの缶は、傾きかけて、今にも落ちそうになっていた。
ランダルは、それに気づくと、
何気ないふうを装いながら、そっと手を伸ばして缶を受け取る。
中身がこぼれないように注意深く、
そして、気づかれないように、そっと床へ置いた。
隣のセバスチャンは、わずかに姿勢を直して、
袋の中からスナックをひとつつまむ。
その仕草には焦りも意味もなく、ただの動作がそこにあった。
まぶたの裏が、じんわりとあたたかかった。
ランダルの体温が、昔よりほんのすこしだけ、ちゃんとあたたかくなっている気がした。
誰も話さず、誰も動かないまま、時間だけがなめらかに流れていく。
そのなかで、は、ただ静かにまどろんでいた。
テレビがついていることも、光がまだ消えていないことも、もう気にならなかった。
END