第12章 ■短編『よるのまんなか』
は、寄りかかったまま、ふわりと小さなあくびを漏らした。
炭酸の甘さと、隣から伝わるぬくもり。
ランダルの肩に触れた額から、じんわりとあたたかさが伝わってきた。
それは、最初にここへ来たときに感じた、冷たい感触とは違った。
冬の朝にそっと置かれる湯たんぽのような、弱いけれど確かなぬくもり。
は無意識のまま、さらに体をあずける。
缶を持つ手も力が抜け、膝の上へと滑り落ちそうになった。
ランダルは、その動きに反応して、びくりと肩を震わせた。
手を動かしたい、抱き寄せたい、けれどできない──
そんな葛藤が、彼の小さな仕草のひとつひとつに滲んでいた。
指先が空中で一度ふわりと浮き、
けれど結局、何も掴めないまま、そっと床へ戻される。
セバスチャンは、そんなふたりを横目に見た。
ちらりと、ランダル越しに、うとうとしかけたの顔を確認する。
そこに、嫉妬も苛立ちもなかった。
ただ、どこか淡く、置いていかれるような、
それでいて妙に現実味のない、複雑な呼吸が胸をかすめる。
セバスチャンは、目を伏せるようにして、小さな吐息を漏らした。
そして、何事もなかったかのように、またテレビへと視線を戻す。
画面では、誰も知らない国の街並みが、ぼやけた色で映し出されていた。
音もなく、意味もなく、それでも確かに流れていく光景。