第12章 ■短編『よるのまんなか』
ぱた、ぱた、と軽やかな足音が廊下を駆けていく。
その音はすぐ近くで止まり、静かな間がひとつ置かれる。
扉がそっと開き、ランダルがひょいと顔を覗かせた。
その顔がぱっと華やいで、目をきらきらと輝かせる。部屋の中を見渡して、ソファに並ぶふたりを見つけると──
その顔がぱっと華やいで、目をきらきらと輝かせる。
「あ、見~つけた♡二人だけでずるいよ。なに見てるの?ボクも混ぜて~」
その声に、とセバスチャンがほぼ同時に肩越しに振り返る。
ほんの一瞬だけ、お互いの視線が交差し、
すぐにまた視線は、ランダルの方へ戻った。
ランダルはにこにこと笑いながら、ふたりの間に置かれたスナック菓子の袋に目を留める。
「おっと」とつぶやきながらそれをそっと手に取り、
すぐに、そのわずかな空間に目を付けた。
そして、遠慮もなく──けれどどこか嬉しそうに──その隙間へぐいっと体をねじ込む。
当然、間隔はぎゅうっと詰まった。
セバスチャンは無言のまま、静かに体をずらして、また同じ距離を取り直す。
はとくに気にする様子もなく、自然とランダルの方へ身体を預けた。
その動きに、ランダルは一瞬ぴたりと固まる。
肩越しにちらりとの顔を見て、そわそわと指先を動かす。
けれど、何気ないふりを装って、スナックをひとつつまみ、口に放り込んだ。
画面では、音のないアニメが流れている。
奇妙な顔をしたキャラクターたちが、延々と画面の端を行ったり来たりしていた。
セバスチャンはランダルを一瞥し、
また無言で缶を傾けて、テレビへと視線を戻した。