第11章 おわり
ランダルは、開きっぱなしの小箱をひとつ手に取ると、
中に入っていたリボンやピンをそっと戻して、ふたを閉じた。
私は何も言わず、その隣に腰を下ろす。
床の上には、衣装の端がいくつもはみ出していた。
端をそろえて、畳んで、たまにタグがどちら向きか迷って、
それでも、なんとなく手が止まることはなかった。
「……ねぇ、、これさ……かわいいと思う?」
差し出されたのは、肩にふわっと羽のような飾りがついたブラウス。
私は少しだけ首をかしげて、それからうなずいた。
それが私のものなのか、セバスチャンのものなのかは、
たぶん、ランダルだけが知っている。
「ふふ、でしょ? うんうん、に似合いそう~」
そう言って、彼はわざとらしく私の肩にブラウスを当てる。
「ほら~、こうやって……あ、ちょっと動かないで~……よし、完璧!」
私はされるがままにされて、
ただ、それを受け入れていた。
ランダルはにこにこしていたけれど、
その笑顔の奥に、どこか「もっと見ていてほしい」ような空気があった。
そっと、彼の袖を引いて、今度は畳む方を手伝う。
「え~、もうやる気出ちゃった?じゃあ……ボクもがんばろっと」
小さな箱にピンを整え、ブラウスをたたみ、足元の散らかりを拾っていく。
少しずつ、部屋が元の姿に戻っていくのが、ちょっと不思議だった。
セバスチャンはまだ静かにしていた。
たまに目を開けてこちらを見るけれど、何も言わなかった。
そんな空気の中で、ランダルがぽんっと手を打った。
「ね、。……そろそろ、お昼にしよっか」
その声は、どこか名残惜しそうで、でも軽やかだった。
私はうなずいた。
ランダルは立ち上がると、またふわりと手を差し伸べてきた。
その手を取って、私はゆっくりと立ち上がった。