第11章 おわり
まぶたが、ふるふると揺れて──
ランダルが、ゆっくりと目を開けた。
膝の上で、体がもぞっと動く。
「……ん、……まだいてくれたんだ~?」
その声は、少し眠たげで、どこか甘えているみたいだった。
私は、膝のうえの彼の髪をそっとなでながら、
やさしく答えた。
「うん。……ランダルの寝顔、見てたの」
ランダルは目を細めたまま、しばらくじっとこちらを見て、
それからふにゃりと笑った。
「……えぇ~、やだなぁ、なんか……ちょっと恥ずかしいかも」
そう言いながらも、彼の声には嬉しさがにじんでいた。
顔を両手でこすって、ゆっくりと体を起こす。
膝から頭をそっと外し、布の上で小さくのびをした。
床に敷かれた柔らかなマットには、まだほんのりと体温が残っていて、
私はそこに手を添えたまま、ぼんやりとその温もりを感じていた。
部屋の中は、しんと静かだった。
朝とは違う、午後のぬるい光が、カーテン越しにさしている。
私はふと、周囲に目を向けた。
セバスチャンは少し離れたところで、床に腰を下ろしていた。
うつむいたまま、背中がゆらりと動く。
眠っている……わけではないけれど、
そのまぶたは重たそうで、ゆるくうとうとしているようだった。
目をこすりながら、ランダルが立ち上がる。
「……あれ……」
ちら、と部屋を見渡して、首をかしげた。
「……ボクたち、片付け途中だったんだよね?」
その視線の先には、整いかけたままの衣装の山。
畳まれかけたワンピース、散らばったリボン、
小物の箱が、ぽん、とひとつだけ開いたままになっていた。
「うーん、がいてくれると、つい気がゆるんじゃうな~……」
そう言いながら、ランダルは笑った。
眠気の余韻を抱いたまま、それでも少しずつ、体を動かし始める。