第11章 おわり
部屋の中は、少しだけ散らかっていた。
といっても、乱雑というより、物が多すぎるだけだった。
ドレスやスカート、リボンに帽子。
小物の箱や靴、手袋のかけられた台。
それらは、どれもきちんと扱われているのがわかった。
床に広がってはいても、ぐしゃぐしゃではなく、
ただ「途中」のまま、そこに置かれているようだった。
私は、裾の長いワンピースを拾い上げる。
薄いレースがひらひら揺れて、
光に透ける布の質感が、とてもきれいだった。
ランダルは棺のそばに座っていて、
色とりどりのリボンを眺めながら、ゆっくりとそれを巻きなおしていた。
「ボク、こういうの畳むの得意だよ?……でも、量があるとさすがにめんどくさ~い」
笑いながら、隣のぬいぐるみの帽子を直す。
衣装の山には、私のもののほかに、
セバスチャン用の制服や、名もない人形たちの服も含まれていた。
私は、それらの違いをわかっていた。
自分のではないものはそっと避けて、
自分の衣装だけを丁寧にたたんでいく。
「……なんかさ、あったかくなると眠くなるよねぇ~」
ランダルが、ころんと転がるように横になった。
「、ちょっとだけ、そばにいてくれる?」
私はうなずいて、棺のそばに膝をつく。
ランダルは、そのまま私の膝に頭をのせた。
さらりと落ちた髪が、衣装のレースと混ざる。
まぶたがゆっくりと閉じていく。
この部屋の空気は静かで、
まるで服の海に包まれているようだった。