• テキストサイズ

【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第10章 ゆめのせかい


「で……どこが、好き?」



サトルの問いに、私はすこしだけ考えた。
そして、ぽつりと、言葉を落とす。



「……なでてくれるところ。髪とか、肩とか、背中とか。
ときどき、そっと爪が触れて、くすぐったくて──ねこに甘えられてるみたい」



隣で、ランダルの肩がぴくんと動いた。



「目が合うと、へんな話を始めるところ。私の耳にしか聞こえないような、小さな声で」



ランダルがそっと目を逸らす。
でも耳の先が、ほんのり赤い。



「危ないときに、どこからでも走ってくるところ。まるで、ずっと見てたみたいに」



私は、思い浮かぶ順に、ぽつりぽつりと並べていく。



「寝るとき、となりにいると、からだがふわふわになる。あたたかくて、でも変な形に眠るから、おもしろい」



ランダルがごそごそと、襟元に指を差し込む。
くっと布を引っ張って、息を逃がすようにのどを動かした。



「あと、着せ替えごっこがすきなところ。自分の趣味が強すぎて、ちょっと変。
でも、わたしのことをすごくきれいにしようとしてくれるから、……おもしろい」



声に起伏はなかったけれど、言葉の奥には、
あたたかいものがふわりとたまっていた。



「うるさくて、話がとんだりするけど……それも、なんか、へんで……好き」



最後のひとことが落ちると、ランダルはもう何も言えなくなっていた。



「……ん゛ぐぅ……」



襟をひっぱったまま固まり、顔を赤らめ、ただ喉の奥で唸る。



サトルはそれを、黙って見ていた。
目を細め、口元の端がぴくりと上がる。



「……なるほど」



その声は小さくて、でもどこか楽しげだった。



そして、何も言わずにランダルにだけ視線を送る。
完全にからかっている目。



ランダルはそれに気づき、じろっと睨み返した。
でも目が合った途端、さらに顔を赤くしてうつむいてしまう。



空気はふんわりと温まり、
どこかくすぐったくて、居心地のいい沈黙が、机の上に落ちた。
/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp