第10章 ゆめのせかい
「ねえ、ちゃん」
サトルが、ふとこちらを見て言った。
その声には、まるで前から何度も話してきたかのような、自然ななじみ方があった。
「ダルって、家ではどんな感じ?」
私は少し考えてから、小さく首をかしげた。
どう答えたらいいのかわからなかったけれど、サトルはすぐに笑って、
「あ、困らせちゃった?ごめんごめん」
と、片手を挙げてひらひらさせた。
「でも、ほんとに思うんだよね。ダルってさ、ちょっと不器用だけど、ものすごく一生懸命でしょ?」
「……へへっ」
ランダルが隣で照れたように笑う。
「ボク、なんか褒められてる……?」
「うん。めちゃくちゃ褒めてる」
サトルは笑いながら、あっけらかんとそう返した。
空気が、やわらかくなる。
さっきまでどこかぎこちなく感じていた空気が、ふわっと軽くなっていく。
「……でね、ちゃんはさ、ダルのどこが好き?」
その問いかけに、私は思わずサトルを見た。
視線はまっすぐで、でも重くなく、ただ“知りたくて聞いている”ような純粋さだった。
隣でランダルがわたわたと手を振る。
「ちょ、ちょっとサトル、それ聞いちゃうの!?や、やめようよぉ~~~」
「だって気になるじゃん?親友として」
サトルはあくまで自然に、軽やかに言ってのけた。
机の向こうでは、セバスチャンが無言のまま座っていた。
ただそこにいるだけで、まるで最初からこの場の一部だったように、微動だにしない。
目を伏せているのか、どこかを見ているのかも、わからなかった。