第10章 ゆめのせかい
ランダルは立ち上がると、机に手を置いたまま、こちらを見下ろした。
「ねぇ、、ちょっとだけ、おさんぽしよっか」
“おさんぽ”というには、教室の中は狭すぎる。
でも、それが夢の中でのランダルの言い回しだと、なぜかすぐにわかった。
彼は私の返事を待たず、軽い足取りで教室の扉へ向かっていく。
カタン、カタン──と、夢の中らしからぬ硬質な足音だけが、無人の空間にやけに響く。
私は視線をセバスチャンに向けた。
彼は立ち上がらず、腕を組んだまま、じっとランダルの背中を見ていた。
「……ついてくだけなら、まあ、なんとかなるか」
ぽつりと、そんな言葉をこぼしてから、彼も静かに椅子を引いた。
私は、立ち上がる。
その瞬間、教室の壁が──すこしだけ“遠のいた”気がした。
ランダルが手を伸ばす。
私はその手を取ることもせず、ただ近づいた。
扉の向こうには、廊下が続いていた。
見覚えのないはずの、その廊下を。