第10章 ゆめのせかい
ランダルは、私とセバスチャンのあいだにある席へすっと腰を下ろした。
そんな席、あっただろうか?と思ったけれど、
今となっては最初からそこにあったような気がしてくる。
机の角には、誰のものともつかない削れ跡があって、
そこにランダルが腕をのせると、教室の空気がさらに落ち着いていった。
「……今日、いい天気だね」
ぽつりとこぼされた言葉に、セバスチャンは無言で、手のひらに頬を乗せた。
誰もツッコまない。
この空気の中で、下手な言葉を出すのは、何かを壊す気がした。
ランダルは、シャープペンの芯をくるくる出したり引っ込めたりしながら、
私の方へ軽く体を傾ける。
「って、ちゃんとノート取るタイプ?」
そんなの、聞かれたことなかった。
夢の中なのに、私はふつうに首をすくめた。
よくわからないけど、なんとなく楽しくて、ちょっとだけくすぐったい。
「……ったく」
セバスチャンが小さくつぶやいた声は、机の中へ吸い込まれていった。
でもその声に、ほんの少しだけ──緊張がにじんでいた。
窓の外では、木の葉が揺れていた。
誰もいないはずの校庭で、誰かがボールを蹴っている音がした気がした。