第9章 たべられたひ
食事を終えると、ランダルが椅子を引いて立ち上がった。
「、今日は疲れたでしょ?……今日はもう寝ようね」
私の方へ手を差し伸べながら、
そっと覗き込むような声でそう言った。
隣のセバスチャンに視線を移すと、
彼は少し眠たげな目で、静かに水を飲み干していた。
「……ほら、セバスチャンも。」
ランダルがそう言うと、セバスチャンは特に反応を返さず、
でも自然な流れで椅子を引いて立ち上がった。
私もそれに続き、ランダルの隣に並んで歩き出す。
3人で部屋を後にすると、食卓には静けさが戻った。
ニョンが席を立ち、手際よく皿を重ねはじめる。
ニェンは無言でスプーンやナイフをまとめ、盆に揃えていく。
食器の音だけが、部屋の中で穏やかに響いていた。
ルーサーはまだ椅子に腰を下ろしたまま、
頬杖をついて、その様子をゆっくりと眺めていた。
指先でカップの縁をなぞりながら、
歩いていった背中のほうを、静かに見つめている。
「……最近は、自分からちゃんと寝るようになった」
ぽつりとこぼれる言葉。
それは誰にも向けられていないのに、確かに届いていた。
「が来てから……
ランダルには、いい影響を与えているようだね」
その声は、思ったよりもやさしかった。
けれど、その奥に、何か別の想いが潜んでいたのかどうかは――わからない。