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【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第9章 たべられたひ


食卓には、いつもの顔ぶれが揃っていた。



ニョンは湯気の立つスープを静かに見つめ、
ニェンは手を止めたまま、まだ料理に手をつけていなかった。



セバスチャンはすでに水を飲み終えて、グラスを回している。



私とランダルが並んで着席すると、
ルーサーが穏やかな目を向けてきた。



「……ふふ、うまく着られたようだね。
ランダルの選んだ服、とてもよく似合っているよ」



落ち着いた声。
すべてを承知している者の、やさしい観察だった。



するとランダルが、すかさず前のめりに身を乗り出す。



「でしょでしょっ!ボクがぜーんぶコーディネートしたんだよ!
髪も、ぜんぶ!はボクのかわいいプリンセスなんだ!」



胸を張り、自信たっぷりに笑うその隣で――
ルーサーが、ほんのわずかだけ首を傾げた。



「……プリンセス、か」



その声は小さく、
何かを思案するように遠くへ落ちていった。



けれどランダルは、それに気づいていないふりで、
私の方へと体を向けた。



「ねー?ねー、!」



手を取られて、覗き込まれる。
楽しげで無邪気で、でもその奥にある確信は揺るがない。



「ボクのかわいいプリンセスだよね?ねー?」



まるで、最初からそう決まっていたかのように。



私は――



言葉では何も返さなかった。



けれど、その声のやわらかさと、
手のぬくもりに、心のどこかがほんのりとあたたかくなるのを感じていた。



ふと、微笑む。



「……ん」



小さくうなずいた私に、ランダルは満足げに目を細める。



“プリンセス”が何を意味するか――
誰より上とか、選ばれし者とか、そういうことはよくわからなかったけれど、



ランダルが私のことを、
とても大切に思ってくれていることだけは、ちゃんと伝わっていた。



それで、十分だった。
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