第2章 まどろみのなかで
ランダルは、ソファの背もたれに両腕をかけると、体を揺らしながら視線を巡らせた。
「さてと。じゃあ、きょうはなにして遊ぼっか~」
誰に聞かせるでもなく、けれど私とセバスチャンのどちらにも向けられた声だった。
「“影踏み”とかいいかも。ねえ、影の上に立ったら、その人は“しばらく動いちゃダメ”ってルールにして……」
セバスチャンが眉をわずかに寄せた。
「それ、ただの足止めだろ」
ランダルはくすくすと笑いながら、ソファから転がるように床へ降りた。
「うん、でもさ、たとえば……の影を踏んだら、ぼくが好きなだけ撫でてもいいってルールも追加して……」
その目が、私を見ている。
私はただ、じっとその場に立ったままだ。
ランダルは床を這うように移動して、私の足元で仰向けになる。
「ほら、こんなふうに影が長いって、チャンスがいっぱいってことなんだよねぇ~」
指先で床の影をなぞる仕草。
ふざけているのか、本気なのか、判別がつかない声。
セバスチャンは、何も言わずに目をそらした。
ランダルが身体を起こし、今度はセバスチャンの方へ向き直る。
「じゃあセバスチャンの影踏んだら、なにがいいと思う?」
「さあな」とセバスチャンがぼそりと答える。
ランダルはふっと笑って、両手をひざの上に置いた。
「……うーん、やっぱり、みんなのぶん、ぼくが決めていい?」
その提案に、誰も賛同も反論もしなかった。
静かな部屋に、じわじわと濃い空気が満ちていく。
ランダルは、それを一人楽しむように、口元を吊り上げた。