第9章 たべられたひ
私は、そっと衣装の裾を整えた。
ランダルは、その様子を間近で見ながら、落ち着きなく前後に揺れている。
「う、うわぁ……やっぱり……ほんっとうに似合ってる……!」
服の胸元に指先をそっと添えて、飾りの位置をちょんと直す。
スカートの膨らみ具合も、手のひらでぽんぽんと整えていた。
顔は真っ赤。
鼻血は止まっていたけれど、目がきらきらしすぎて、どこか危ない。
「はぁ、かわいい……かわいい……かわいい……!」
何度も繰り返しながら、ぐるりと一周私の周りを回って見渡して、また前に戻る。
そして、ふと、ぴたりと動きを止めて――
「……あっ、ダメだ」
突然、手を打つようにして声を上げた。
「こんなとこで終わっちゃだめだ、もったいない、まだ完成してない!
の髪、髪も整えなきゃ……! うん、ぜったい……!」
私の髪に手を伸ばしかけて、途中でぐっとこらえる。
「いこ、!ボクの部屋で!ちゃんと、ちゃんと、すっごくかわいくしてあげるから!」
テンション高めのまま、私の手をがしっと握ってきた。
私は一瞬だけ見上げて、
その手に逆らうことなく、ついていった。
ランダルの足取りは、どこか浮かれていて、ちょっと跳ねているようだった。