第9章 たべられたひ
ランダルの部屋は、嵐が通り過ぎた後のようだった。
引き出された衣装の山。
投げ出された靴下、リボン、帽子、下着。
クローゼットは開けっ放しで、片方の扉がガタンと傾いていた。
「うーん……うーん……どうしよっかなあ……」
部屋の真ん中で、ランダルが床に座り込んで唸っていた。
膝の上には三着分のワンピース。
その横には制服風、パジャマ風、ちょっと変なコスプレ風まで並んでいる。
「白が似合うかなあ……でもピンクも……
ねぇ?こういうの、が着てたら、絶対かわいいと思わない?」
人形に話しかけては、ぱっと笑い、
次の瞬間には眉をひそめて新しい服を引っ張り出す。
「今はお風呂でしょ?だったら、着替えは涼しげな方がいいよね?
でもでも、寒いといけないし、羽織れるやつも用意しといた方が……」
思考は止まらない。
手も止まらない。
気づけば部屋中に服が散乱し、敷き布やぬいぐるみの上にまで服が乗っていた。
「やっぱり、着せてからじゃないとわかんないなあ……」
呟きながら、ふと手に取ったのは真っ赤なケープ付きのワンピース。
どこか古びているけれど、レースとリボンが丁寧にあしらわれていて、よく似合いそうだった。
「これ、前にボクが選んだやつだ。ふふっ……」
指先でそっと胸元の飾りボタンをなぞる。
その目は、少しだけうっとりと細められていた。