第1章 プロローグ
学園長に名前を当てられた。言ってないんだが。
『……なんで、知ってる?』
「……本当に……?本物の、シルヴァさんですか……?」
んん?どういうことだ。
「覚えて、ないんですかね…?私、ディア・クロウリーですよ」
ディア・クロウリー……?聞いたことはあるような、ないような……
「鏡越しに、お話したじゃないですか……忘れてしまったんですか…?」
『あー……なるほど……??』
そういえば話した気もしなくもなくも……
『正直……鏡越しに人と会話しすぎて覚えてないってか……』
決して興味がなかったとかいうわけではないんだが。
「……そうですか……わかりました。
では!そちらのお二方。魔法も使えない者を通わせるわけにはいきません……家まで送ってもらいましょう!さあ、闇の鏡よ!」
急激に人が変わった。
魔法が使えないらしい二人の人間を返そうとするが、どうやら彼らの家はこの世界にないらしい。異世界とわかり、男の方の血の気が引いていく。女の方は、むしろ興奮しているようにも見える。相当肝が据わっているのか、それともスリル好きの変態かどっちだ。
「ん?世界……?そうだ!」
男がひらめいたというように声をあげ、こちらを指差してきた。
「そこの人、さっき世界がどうとか言ってましたよね!あなたならなんとかできるんじゃないですか!?」
はあ。こいつは私の話を聞いていたのか聞いていないのかどっちだ。
『言っただろ、そういう直接的な干渉は上しかできないって……ん?』
つまり上がなんかやったってことか?まさか上が私とこの人間どもを送ったなんてことは……
『ミラー』
上と接続を試みる。すぐに繋がった。話しかけようと口を開くと、接続が切断された。
『…………処す』
「今のは……?」
『残念だ、人間。お前たちはどうやらうちの上に送られた存在、上の意思抜きに世界に帰ることはできなさそうだ』
「……そ、んな…………」
男が絶望する。女は嬉々とした表情が隠しきれていない。なにがそんなに嬉しいんだ。やっぱ変態だろ。
『まあ、かくいう私も上に送られたらしい。きっと有能な私が邪魔だったんだろ。仲良く異世界で過ごそうじゃないか。君たち、名前は?』