第2章 に
誰かが私を呼ぶ。
名前を持たない私を、君とよぶ。
変ね、燃え朽ちた筈なんだけど。
幼いような泣き声。
きっとこれが最期ね。
安心して、これでも私慰めるの得意よ?
だって、貴方よく泣きにきてたものね。
泣き真似は得意なくせに、泣くのが下手くそで。
私何度笑い飛ばしてやろうと思ったことか。
私に触れた優しさで、誰か察したわ。
"嘘つきの水心子"
『…誰が、嘘つきだ』
"あら、通じるのね"
『…あぁ』
"じゃあ、泣き虫の方が良かったかしら?"
ぐいっと、涙を拭いたのね。
この前は隠していた顔がはっきりと見える。
"今日は顔を隠さないの?"
『え?…あぁ、本当だ。忘れていた』
"意外と抜けてるのね"
『むっ、』
"あぁ、怒ってる?ふふっ、でも嬉しいわ。また会いに来てくれたの"
『この本丸のことを聞いて居ても立っても居られなくなった。私に話しかけた君を、ここに残してきたことを後悔していた。
君と話せたら、聞きたかった。君はこの桜なんだろう?』
"そうよ"
『どうして話せる?』
"貴方が耳を傾けたからでしょう?"
『どう言うこと』
"さぁ?難しいことはわからないわ。でも、貴方の仲間に私の声は聞こえなかった。そういうことでしょう?
私をここに連れてきたモノも、私の声を聞こうとはしなかったわ。お話は上手だったけれど"
貴方ともこうして話せれば良かったわ。
でも、貴方はきっとわざと聞かなかったのよね、だって話したら未練が残るもの。
目の前のモノように。
『君は誰に連れて来られたんだ?』
"秘密よ"
『ここの主か?』
"違うわ"
『僕の、仲間か?』
"さぁね。でも、貴方にも似ていたわ"
『そうか。どんな見た目で』
"雪みたいなモノよ。何、会わせてくれるの?"
『それは…』
"できないわよ。消えたの、灰になって消えたの。だから会えない。
灰になったら、同じところに行けると思ったのに、貴方が起こすからまた置いてけぼりよ"
『それはすまない』
"貴方がいなくなった後、ゾロゾロ来たのは何?私やここを荒らして燃やしたのは何?"
『政府のモノだ。…すまなかった』
"そうね、独りの方がマシって思ったわ。遠慮がないんだもの。…でも、それが正しいのよ。貴方は寄り添いすぎ"