第2章 に
"私は大丈夫よ。貴方、誰かを置いてきたわね?そうね、この間の藤色の子"
『あぁ…』
"心配しているわ。早く戻りなさい"
『君は?』
"春を待つわ。得意なの、待つのは。安心していいって、貴方言ったわ。そうでしょう?"
『それでも、君はこんなことに』
"でも、貴方がこうして話し相手になってくれた。そろそろ、眠いの…私"
『…』
"いつか、見にきて。今度は私が咲いている時に。それはそれはとても綺麗なのよ。
みんなが感嘆のため息をつくの、見事だってね?
驚くわよ、だって、私は良い驚きのために連れて来られたんだもの。
それに、大切に育ててもらったの。大事にされたから、とても綺麗なのよ。分かるでしょ、貴方は"
『っ、…あぁ。今度は清麿や大慶、みんなと来る。約束しよう』
"素敵、それならもう…独りじゃないわね"
最期に、君の姿を見た気がした。
澱んだ空気が晴れて、春の風が吹いた気がした。
私の足元に小さな芽。
「まさか、」
少しずつ、時計の針が動いていくような気がした。
帰らなければ、清麿が待っている。
叱られるかもしれないな。
最悪、刀解かもしれない。
…でも、後悔はない。
ーーーーー
ーーー
「ま〜さ〜ひ〜で〜」
「…っ!?」
「清麿くん、清麿く〜んっ!正秀飛っび起きた〜」
「本当。あぁ、良かった」
私のベットの脇、見慣れた2人が立っていた。
「全く〜、心配したんだよっ!清麿くんのっ、慌てようと来たら、」
「大慶」
「むぅ、」
「とにかく無事で良かったよ」
「清麿、私は」
「水心子、ごめんね。キミも知っていると思ったんだ、あの本丸のこと。もっとちゃんと説明すべきだった。
他のみんなにはうまく話してあるよ、大慶にも協力してもらった。
…ただ、3日も目を覚さないから」
「そうか、ありがとう。心配かけてすまない」
「話をしてきたんでしょう?声の主は、あの大きな桜の木?」
「え?!」
「図星だ。…なんてね。倒れていたんだよ、あの木の袂に。だから、そうかなって」
「正秀〜っ、凄いね!木の精ってや〜つ?どんな姿だったの??」
「可憐だった。…約束したんだ、次は咲いている姿を見せてくれると」
「そう」
優しい2人や、他の者からのお咎めもなかったのは、清麿の采配だろう。