• テキストサイズ

cerisier 【刀剣乱舞】

第2章 に


 「お疲れ様」
 「清麿、この間調査した本丸」
 「…あぁ、大きな桜の木の?」
 「そうだ」
 「聞いたよ、残念だったね」
 「残念?浄化うまく行かなかったのか」
 「聞いてないの?」
 「??」

 清麿の話を聞いて、居ても立っても居られなくなった。
 心より先に体が動く。

 ごめん。
 ごめんね、私は君と約束したのに。

 君を安心させたかった、ただそれだけだったのに。

 これは、僕のエゴ。

 時空転移装置で、先日の本丸に行けるよう設定する。

 清麿、すまない。
 君を幻滅させてしまうかもしれない。
 これは、役目じゃないのもわかってる。
 でも放ってはおけないんだ。

 激しい光が私を包む。

 「水心子!!」

 私に追いついた清麿の、困った表情を最後に見た。
 それでも、どうしようもなかったんだ。







ーーーー
ーー


 

 この場所にたどり着いた時、寒気がした。
 燃え後は記憶にこびりつきそうなほど、酷い有様だった。
 一方的で、暴力的で。
 悔しかった。
 言いようのない感情が湧いてくる。

 「ごめん、ごめん…」

 声がしない。
 君の声がしない。

 君は誰だったの。

 あの時立ち止まって聞いてあげればよかった。
 寂しいと言った君に、寄り添ってあげればよかった。

 大きな桜の木、あれはどうなったろう?

 今にも泣き出しそうな、澱んだ空。

 先を進むと大きな影があって、ひとまず安心する。
 安心…する?

 燃え残ったその姿に、絶句した。

 「あ…っ、あ…っ、あぁっ、」

 "化け物"

 過ぎった言葉を振り払う。

 駆け寄って、触れる。
 壊さないように、そっと。

 熱がまだ残ってる気がした。

 声の主が、この桜だったモノのような気がしてならない。
 息を潜めた君が無事なら、どんなによかったか。

 「ごめんね、遅くなった…僕は知らなかったんだ。
 君が、こんな有様になってたこと」

 悔しくて、たまらない。

 「言い訳だ、全部」

 僕が声をちゃん聞いていれば、調査の後同行しておけば、僕が任務を最後まで遂行していれば、そんな"たられば"が胸を締め付ける。

 「もう君は、咲けないんだね。君が咲くところを、僕は…見て見たかった」

 泣きたいのは君の方だろう。
 寂しいと言っていたのに。
 
/ 66ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp