第2章 に
化け物の方がマシよ。
私のようにここから動けないわけじゃないもの。
ゾロゾロと集まってきたわ、残穢なんて、そんな言葉知らない。
いいモノじゃないことは、そのモノ達が私に向ける視線でわかったわ。
変ね、みんな私に期待していたはずよ。
私が咲くのを心待ちにしていたはずよ。
化け物じゃないわ。
『どうするよ、これ』
『切るか?』
『馬鹿、俺たちの専門じゃねぇよ。こんなやべぇ仕事、引き受けるんじゃなかった』
そうよ、貴方方なんかじゃ私を切れないわ。
『燃やしちまうか』
『まぁ、切るよりわな』
『祈祷できる奴連れてこようぜ』
『おーい』
知らないのね、私は燃えにくいのよ。
祈祷なんてきかない、そんなの聞かない。
燃えてやらない。
朽ちてやらない。
貴方に見せてないもの。
貴方がいなくても平気なのよってところ。
貴方がいなくても咲けるのよってところ。
何も知らないのに、踏み荒らして。
好き勝手言って。
あのモノは嘘つき。
優しいと思ったのは気のせいね。
水心子って言ったかしら?
嘘つきね。
これじゃあ、安心なんてできやしないわ。
思い出した。
貴方も嘘つきだった。
私の世話をしている時、貴方言ったもの。
私に虫がついた時、私が病気になりかけた時、丁寧に私を大事にしながら、言ったもの。
私を守るって、いったもの。
安心して咲いていいぞって、言ったもの。
こんなんじゃ、安心して咲けやしないわ。
こんなんじゃ…。
来た時と同じように、はけていくモノ達。
『それじゃあ、始めるぞ』
小さな火がやがて、大きくなっていく。
大きくなって、私以外を…
違うわね。
今回は私を呑み込んでいく。
強がりでも咲けなくなることは、その熱でわかったわ。
私、もう咲けないのね。
そう思う頃には、見るモノ全てが赤に染まってやがて黒くなった。
私、何もできないのね。
あいも変わらず、何も、できないのね。
貴方を乗せたかった枝が折れる、貴方に見せたかったものが…。
ぷつりと途切れる。
あぁ、終わる。
あっけないのね、私みたいな存在はそれこそ化け物にでもなれると思ったのに。
そんなこと、ないのね…。
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ーー
「清麿、お疲れ様」
「水心子」