第8章 はち
「俺は、あいつに選ばれた。それでも、どうあってもあいつの1番にはなれない。あんたが居座り続けているせいで。俺が写しだからか?」
グッと、鶴丸の襟首を掴んで、その悲痛に歪む顔を見た時ハッとした。
冷静さに欠けていたことにきづく。
公平であるべきだ。
俺は、この本丸の初期刀だ。
「…すまない、忘れてくれ」
「そうか。逆に俺は、山姥切が羨ましいよ」
「憐みか?」
「そうじゃない。俺は1番じゃないからな」
何を言っている、こんなにも思われているのに。
「だってお前はお前のままで選ばれたんだろ。直接、彼女の手で」
「選ばれたわけじゃない、手を伸ばした近くにあっただけだ」
「そう言ってやるなよ。…って、卑屈なのはお前の性分だっけか。本丸が戦の準備をする場所だと思うのは、変わりないが。
こんなことになって、俺は俺の内を見た。複雑な思いで審神者を見て感じていたと思ったが、案外シンプルで驚いた」
眉間に皺がよるのを感じる。
「顕現した時、口上を述べる前に、貞坊に歓迎を受けたよ。みんなにも、待っていたとありがたくもそう声をかけてくるやつが多くて、俺が知ってるやつもそうじゃないやつも。
審神者はどんなやつだろうって、半分期待してた。初めて顔を合わせた時、俺はガッカリした」
「…」
「俺を通して、俺じゃないモノを見ているのを強く感じた」
「…よく、分からないな」
「そうか、お前は分かると思ったんだがな」
「俺が?」
「俺は俺だ。それ以上でも以下でもない。審神者の視線にそれを感じて、その時歓迎してくれてるやつも俺じゃないモノを見て、それに期待してるのを感じて、息苦しく感じた。
だから、歓迎会もせっかく開いてくれた宴だったが、途中で抜けたんだ」
「…すまない」
「それは何に対してだ?」
「分からない」
「潔いな。だから、つまり。俺じゃない鶴丸国永じゃなくて、俺を、見て欲しかったのかもしれない。言うなよ、絶対。」
言われて初めて気付く。
写しである俺はもっと今のコイツの気持ちにも、気付くべきだったのかもしれないと少しだけ思う。
「審神者の心の中にいる俺に、俺は絶対なれない。俺はこれからも、彼女の中の俺に負け続ける。更新できないまま。
いっそ折れて仕舞えば、彼女の中の俺と距離はグッと近づくのかもしれないが」