第8章 はち
「強い霊力を感じるだろう?」
「言われてみれば、な」
「それを持っていれば、折れない。普通の御守りとはそこが違う。だからお前も折れなかった」
「一度折れてしまった方が良かったんじゃないか、そしたら主への接し方だって変えられたかもしれない」
確かに、と思った。
「その考えはなかったな。だから、絶対に折れない方を選んだんだ」
「…」
「主はお前に言うことはきっと望まない」
「何をだい?」
「掻い摘んでなら許されるだろうか」
「さぁ、どうだろうな」
「俺の独り言として聞いて、あとは忘れてくれ」
「内容にもよるかな」
そりゃそうか。
「主を大切にしていた鶴丸国永が、主の前で折れたらしい。本霊に帰るところまで、見届けたと聞いた」
「よくありそうな話だが?」
「あぁ、そうだな。でも、主にとってはただのよくある話じゃなかったんだ。だから、あんたに囚われてる」
「それを聞いてどうしろと?似たようなことを顕現したばかりの頃も言われたが」
「あぁ。…聞くが、あんたどうしてそこまで嫌うんだ」
「嫌い?…違うな。嫌いになるほど、俺は審神者を知らない。