第8章 はち
「俺が起きてると気づいていながら、どうして話を続けたんだ?」
「当事者は知っておいた方がいいかなって思って」
「そうか」
鶴丸さんは、考えるようにまた瞼を閉じる。
「ねぇ、どうして御守りの方守ったの」
「え?」
「ボク渡したよね」
「それもバレていたのか」
「もう少しで危なかったんだよ」
「進軍したのは、部隊長殿だろ…って言っても、君は納得しないよなぁ」
また目を開ける。
「…どうしてこれを使えるんだよ」
袖口から出してきた御守りの、中身を取り出す。
「中見たの?」
「あぁ」
「最低」
「見るだろう、普通の御守りじゃないこれは」
「まぁ、…わかるよね。確かに」
「大方予想はついたが、こんなもの使えないさ。俺のものじゃない」
「断ったのはあなたでしょ」
「それもそうだが」
「ボクは今回の重傷、良かったと思ってるから」
「俺のことが嫌いなのかい?」
「さぁ、どうでしょう。…ただ、鶴丸さんの気持ちがわからない訳でもないから、」
「あぁ、ありがとう」
「お礼を言われるようなことはしてないけど、…でも、少し付き物が取れたような顔してるから、まぁ、どういたしまして」
鶴丸さんは小さく笑った。
「傷はどう?」
「あぁ、もう治った。大丈夫だ…俺の手当ては初期刀殿か?」
「主が札を使って直した後は、山姥切さんが」
「そうか」
「それ、ボクが返しておこうか?」
「ありがたい申し出だが、俺が借りたものだからな。俺から返すよ」
「そう」
「乱はこの中身しってるのか?」
「主の霊力を感じるけど、御守りって中身見ちゃいけないものでしょ」
「それなら、開けて中身を足す主も悪いとは思わないか?」
「加護を足しただけでしょう」
「君もご執心派か?」
「そりゃそうでしょう、ボクはあるじさん大好きだし」
「俺には少し、…おもい」
「男なんだからドンっとこのくらい受け止めるくらいじゃないと」
「君は、どのくらい知ってるんだ?」
「ボクはみんなより知ってると思うけど、山姥切さん程じゃないよ。ボクも加州さんも恋バナ好きだから。よく話し相手になるだけ、可愛いんだよ、あるじさんの恋バナ」
「恋、ね」
「鶴丸さんもあるの?」
「…さぁ。これが、俺のものかそうじゃないのか、知らないからな」
「ふぅん」