第8章 はち
「乱か。…悪かったな、変なことに巻き込んで」
「…結果オーライじゃないの」
「…ぐっ、」
「なんてね、意地悪言っちゃった。いち兄には内緒ね、この作戦に加担したのも、今の意地悪も。怒られちゃうから」
「あぁ。あんたは俺に従っただけだ」
「こらこら。そう言うふうに1人で抱え込んじゃダメでしょう、なんのためのボクなの」
「そうだな」
乱は俺の隣に座った。
「鶴丸さんには2人で謝ろう。主のことは抜きにして、お灸据えるにしても、重傷はやりすぎになっちゃった」
「あぁ」
「判断ミスってやつ、ボクも含めてね。でもこれは、謀反じゃない」
「…」
「大丈夫、でも、主には内緒ね」
「…あぁ」
「うん。…‥本当は、鶴丸さんも悪くないんだけどね」
「わかっているさ、主が望んでいないことも。ただの俺の自己満足ってこともな」
「ボクも、同じ。…なんだけど、でも。きっと」
「きっと?」
「鶴丸さん、なんとなくわかってるんじゃないかなって。本能的に蓋をしているだけで。意外と不器用なだけかも」
「………そう、なのか?」
「そうだといいなって言う、ボクの願いなだけかもしれないけれど」
「あぁ」
「そうそう、変わるからご飯食べておいでよ」
「いや、いい。まだ、腹は減ってない」
「でも」
「この本丸で手当を必要とする重傷は2度目だ。1度目は、俺の初陣の時、これはもう仕方なのないもので、経験のない審神者に手当ての仕方を教えるために、あえて政府が練度に合わない強い敵と戦わせるんだ」
「うん」
「政府主催の連隊戦などは、重症になっても痛みはその一戦のみで長引かない。それすらも嫌だと言った主に、俺たちは刀だと俺は言った。
しばらく言い続けて、ようやく渋い顔でうなづかせた。
俺たちが傷つくのをひどく嫌っているのに」
あぁ、そうか。
悔やんでるのか、俺は。
「情けないな、主の想いを1番に汲んでやらなければならない俺が、主の想いを裏切った」
「…」
「今回の出陣は、俺が相談に乗ったからうまくいくって、そう主はなんとか自分自身を鼓舞してたのに、俺はその期待を裏切ってしまった」
「ねぇ、山姥切さん」
「なんだ」
「落ち込むのは勝手だし、初期刀としての自負もあるとは思うけど、どの戦場にどんな敵がいるなんて、予測はついてもそれは完璧じゃないよ」