第2章 に
『わぁ、すごい!!…あ、すまない』
『大丈夫だよ、水心子。今は僕たちしかいない』
『そ、そうだな。…それにしても、大きな木だな』
『うん。本当に』
誰か私に触れる。
優しいけど、貴方じゃないわね。
『桜か?』
『うん。何年も前、侵攻にあった本丸が所有していた木じゃないかな。その頃はもっと小さかっただろうね』
『…そうか。君は、この場所の歴史を見てきたんだな』
『さぁ、帰ろうか。調査は終わった』
ねぇ、待って。
『え?』
『どうしたの、水心子』
ねぇ、待ってよ。
行っちゃうの?
『誰だ?!』
聞こえるの?
『あぁ』
『水心子』
行かないで、独りは寂しいの。
『すまない、それはできない』
…そう。
『誰と話してるの?』
『清麿は聞こえないのか、すごく悲しい声なんだ』
『引き摺られちゃダメだ。この場所には、未練や悲しみがあって当然なんだ。浄化も済んでない』
『あぁ』
話し相手が欲しかっただけなの、引き留めて困らせてしまってごめんなさいね。
『ここにはいられない、でも、君はいつか独りじゃなくなる。
安心していい、そのために私たちはきたのだ』
…わかったわ。
『清麿、帰ろう。報告を済ませて、浄化作業に移ってもらおう』
『うん』
開かれた空間に、2人が消える。
その後ゾロゾロと人が来たわ。
本当に独りじゃなくなった。
…でも。
でも!!
そのモノ達は、無遠慮だった。
やめて、触らないで、壊さないで、消さないで!
誰にも聞こえない。
せめて、"独りじゃなくなる"とそう言ってくれた貴方がその場にいてくれれば。
壊れていく、思い出が歴史が一つずつ。
思い出した、貴方が灰になって消えた日。
思い出した、蓄積された悲しみ。
『…ッチ、全然綺麗にならねぇ』
『だな、…ったく、アイツら適当な仕事してんじゃねぇよ』
『仕方ねぇさ、お刀様だからな』
『ちげぇねぇ。やってらんねぇよ、給料はいいが割にあわねぇ』
下品、とっても下品。
『見てみろよ、やべぇよここ。何がやべえってこの化けもんみてぇな、木が1番やべぇ』
これなら、独りの方がマシね。
『他の奴らも呼んでこようぜ、ここが残穢の出所にちげぇねぇ』
失礼な奴。
私を化け物扱い。