第7章 なな
「あぁ、言われなくても」
「無茶をするな」
眉が寄るのがわかる。
「あんたはそう言われるのは嫌だろう。でもな、お前だけじゃない、主が大切に思うのは、お前以外の奴らのことだって1番に思っている。
つまり、何が言いたいかというとだな。
お前の采配次第で一つひとつが決まるんだ。気を緩めるなよ、主の大切な一振り一振りを、無事にこの本丸に連れて帰ってこい。
主を泣かせるようなこと、折れてもするなよ」
「俺たちは刀だ。俺はお前とは違う。じゃあ行ってくる」
なぁ、初期刀殿。
君、変な顔で俺を見るなよ。
どんな気持ちなんだ、それは。どんな感情なんだ?
…興味もないが。
「鶴さん!こっちだ」
「ねぇ、国広さんと何かお話ししてたの?」
「いや、別に。じゃあ、お前達。初陣だが、部隊長に選ばれた鶴丸国永だ。よろしく頼む」
それぞれが俺の顔を見て返事をする。
「ここを押すと、ゲートが開くよ」
錚々な顔ぶれ。
仲間達の中でも、上位を争う練度の面々。
何をどうして、この仲間たちにしたのか。
「あぁ」
今回、足を引っ張るとしたら俺だろう。
なんてフラグだ。
他の仲間達に続いて、俺もゲートをぬける。
時空がぐにゃりと歪んでいて、少し気持ち悪い。
抜けた先の風景を見て、驚いた。
俺たちは、さっきまで2205年にいたんだよな?
「…嘘みたいだな」
呟いた言葉は誰に届くでもなく消える。
再現度が高いと言うべきか、空気も匂いも、風景も。
どこか懐かしいような情景。
「鶴さんどうする?先に偵察でもしておくか??」
「あぁ、そうだな」
俺に指示を仰ぐ隊員達。
部隊長になるのは、もう勘弁願いたい。
戻ったらそう打診しよう。
どうやら俺は、集団生活が苦手らしい。
それでも的確に指示を出し、今日のところは敵の気配もないからと途中で見つけた宿に待機することにした。
…あぁ、なんというか。
月明かりに照らされる、縁側に腰掛ける。
…なんというか、出会ってそう間もないのに、あの木に会いたいなんて。
御伽話みたいだ。
「眠れないの?」
「乱藤四郎」
「やだな、乱でいいよ」
「そうか」
「何を思ってるの?」
「庭の桜の木」
「あぁ。立派だよね」
「あぁ」
「でもあれ、僕は嫌いだな」