第7章 なな
部屋に戻らないことを咎められなかったことにも、少しだけホッとした。
それからしばらくして、俺に出陣の命が出た。
やっとかと、気合を入れ直す。
「部隊長は、鶴丸国永」
書状を読み上げるのは、初期刀。
なんのつもりか、その脇に控える主。
読み上げるからないなら、直接命じればいいんじゃないか?
ふとそんなことを思った。
「鶴丸、…国永様」
「なんだ」
「こちらを」
差し出されたのは、御守り。
…あぁ、反吐が出る。
「なんのつもりだ」
ピンク色の、桜を思わせるもの。
「いえ…えっと、うちの本丸では」
「必要ない」
最後まで聞く前に、断りを入れる。
俺の態度に言葉をなくして、少し顔を歪ませる。
俺の言葉に眉を寄せたのは部隊に任命された他の刀達。
「鶴丸、」
初期刀が言わなかったら、きっと他の刀達も同じように俺に向かおうとしただろう。
主を庇うように俺に突っかかってきた、初期刀をその人間は制止した。
「……支度をして、出陣する。他の奴らも気を抜くなよ」
こんな平和ボケした本丸、俺が叩き直してやる。
戦装束に着替え時間には少し早いと、あの木に挨拶に向かう。
風に葉が戦ぐ。
「なぁ、いるのか?…いないよな。まぁ、聞いてくれよ」
そっと、幹に手を沿わせる。
「初陣だ。俺は刀だからな。…ワクワクしてるんだ」
なのに、…なんでだろうな。
「折れるつもりも、負けるつもりもない」
そう宣言するのに、なぜか先ほどの仲間達の顔が浮かぶ。
「面倒だな、俺…お前だけでいいよ」
吐き気がする。
苛立つ。
「お前だけがいい………なんてな。行ってくる。
あぁ。驚きの結果を君にもたらそう。
まかせておけ。先陣切って空気を掴むぜ」
気合を入れるように、そう語りかけて俺はそこを離れた。
薄情なやつ。
なぁ君。初陣の時くらい、励ましと労いの言葉をかけに出てきてくれても、バチは当たらないと思うぜ。
…見送りには、初期刀しかいなかった。
当たり前か、俺のあからさまな態度。
それに対して、どう思ったりもしない。
「鶴丸」
「なんだ」
「主に変わって、言っておく」
「初期刀って偉いんだな」
「…。
お前は部隊長に選ばれた、隊の指揮を取るのがお前だ」